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読み物企画 『群馬の高校野球』を考える~2015年夏~

2015/06/26

読み物企画
『群馬の高校野球』を考える~2015年夏~

『群馬の高校野球』を考える~2015年夏~ Part1
2015年夏の
注目選手は誰だ?!
<元プロ野球選手 西澤洋介さんに聞く、2015年夏の注目選手>
*西澤洋介さんのプロフィールは24頁のコラムをご覧ください
捕手 柘植 世那(高崎健康福祉大学高崎高校 3年)
捕手として素晴らしい才能を持った選手です。今年のドラフト会議で指名を受けるかどうかは、プロ野球の球団側の考え方次第でしょう。「長期的に捕手を育てたい」という球団は当然指名リストに入れていると思います。近年の捕手では2年前に埼玉県の花咲徳栄高校からドラフト3位でオリックスに入団した若月健矢捕手のような存在ですね。

投手 吉田 純也(中央中等教育学校 6年)
吉田選手の最大の長所は使い減りしていない将来性の豊かさです。センスが良く身体的にも非凡なものを感じます。現在は投手ですが、潜在能力の高さをより発揮できるのは、野手だと思います。今年のドラフト会議で指名を受ける可能性は少ないので(もちろん、本人が「育成でもOK」と言えば話は別ですが)大学や社会人に進むと思われます。そこで、自他とも認める実績を残して、プロ野球に進んでほしいですね。贔屓目なしで『類まれな逸材』です。

脇本直人に続き健大高崎から
2年連続ドラフト指名はあるのか?!
<高崎健康福祉大学高崎高校 青栁博文監督に聞く、柘植世那選手と驚異の1年生トリオ!>

捕手 柘植 世那(高崎健康福祉大学高崎高校 3年)
捕手としての能力はもちろんリーダーシップがありキャプテンとしてチームをよくまとめてくれています。プレーヤーとしての最大の魅力は『天性の捕手としてのセンスの良さ』です。とても落ち着いた捕手で、構えやキャッチング、送球、リード面、全てが高校生離れしていますね。以前、甲子園で対戦した捕手でプロ野球で活躍している、近藤健介選手(横浜・北海道日本ハム)や森友哉選手(大阪桐蔭・埼玉西武)と比較しても、打撃はともかく、捕手としては遜色のないレベルじゃないかと思います。

注目の1年生トリオ!
安里 樹羅(高崎健康福祉大学高崎高校 1年)左打ち
沖縄県の北谷ボーイズ出身の選手です。彼の入学直後のホームランが、横浜高校時代に筒香嘉智選手(横浜DeNA)がうちのグラウンドで放った『筒香の伝説の160m弾の再現!』と関心を集めているようです。長打力に目が行きがちですが、とても足の速い選手です。

永渕 遼(高崎健康福祉大学高崎高校 1年)右打ち
長打力は安里に勝るとも劣らない天性の素質を持っています。身長180cmを超える大型スラッガーです。愛知県の尾張ボーイズ出身です。

安藤 倫(高崎健康福祉大学高崎高校 1年)右打ち
茨城県の波崎ホーイズ出身の選手です。中学時代に野茂英雄(元メジャーリーガー)総監督率いる2014ジュニアオールジャパンに選出され4番を打った逸材です。

『群馬の高校野球』を考える~2015年夏~ Part2
プロ野球経験者に聞く
『プロ野球が求める才能』!

<元ヤクルトスワローズ 忰田幸也さんに聞く『プロ野球が求める才能』!>
 投手では『コントロール』と『変化球』をプロ野球のスカウトの方はよく見ていると思います。私の場合は決め球の『カーブ』がスカウトの目に留まったようです。もちろん直球の球速も重要ですが、それ以上に勝負球にできる変化球があることですね。ニーズの部分では左腕というのは大きなアドバンテージになります。先ほど私の話として「決め球の『カーブ』がスカウトの目に留まった」と言いましたが、左腕であるということと186㎝の身長がなければ、果たして指名を受けていたのか?分かりませんね(笑)。
野手の場合は『走力』と『守備力』です。いくら打力が優れていても守れない選手は厳しいですね。それに「プロ野球の球団側がどれほど長距離砲を求めているのか?」という問題もあります。ある球団関係者は「長距離砲は外国人選手でいくらでも補強できるので、今はリスクを負ってまで長距離砲を指名しない」と言っています。もちろんプロ野球から声がかかるような選手です。アマチュア時代に本塁打を量産しているでしょう。ですが、残念ながら長距離砲のニーズは年々減っていますね。現在のプロ野球でも『生粋の長距離砲』と呼べるのは埼玉西武ライオンズの中村剛也選手ぐらいでしょう。その中村選手にしても守備力はピカイチです。
近年はプロ野球の球団側が即戦力を求める傾向にあります。これは高校卒の新人選手にも当てはまります。もちろん、読売ジャイアンツの大田泰示選手のように「じっくり、辛抱して、育ててもらう」例外選手もいますが、即戦力化の動きは今後も加速するでしょう。少子化や、サッカー・バスケットボールなど小学生年代におけるスポーツの多様化の影響で、少年野球人口は全盛期と比較して大きく減少しています。ですが、プロ野球に入団する選手やその予備軍となる選手のレベルはむしろ上がっていると感じます。その要因の一つに指導者の質の向上があります。私が少年だった頃は知り得なかった技術が今は惜しげもなく提供されています。プロ野球経験者が指導しやすい環境になったことも大きいと思います。

忰田 幸也(かせだ ゆきなり)
生年月日:1970年2月20日 高崎市出身 投手
東京農業大学第二高校3年次の1987年のドラフト会議でヤクルトスワローズから2位指名され入団。2年目の1989年に1軍で5試合に登板。1992年に現役を引退。

<元横浜ベイスターズ 西澤洋介さんに聞く『プロ野球が求める才能』!>
プロ野球のスカウトが最初に見るのが身体の大きさですね。これは投手も野手も同様です。『身体が大きい方がドラフトで指名されやすい』という神話は事実です。投手の場合『球速が絶対条件』と思っているファンの方も多いと思いますが、実は球速は二の次のように感じます。「では、何を見るのか?」と言えば『技術』です。コントロールや変化球ですね。よく「制球難が克服できれば素晴らしい投手なのに…」というコメントを耳にしますが、この『制球難の克服』が一番難しいんです。高校を卒業する年齢になってから技術的なものを向上させるのは大変です。一方で球速は鍛え方次第で5㎞/hぐらいはすぐにアップします。体力面を鍛える方がより効果が大きいということですね。先ほど「球速は二の次」と言いましたが『球の回転数』は気にします。藤川球児投手(阪神タイガース→シカゴ・カブス→テキサス・レンジャーズ→高知ファイティングドッグス)や杉内俊哉投手(読売ジャイアンツ他)は球の回転数が極めて多い投手です。回転数の多さは浮力を生むので、決してホップすることは無いのですが、打者からはホップしているように見えるんです。肉眼では球速表示よりも相当速く感じるはずです。
もう一つの要素は「選手としてのピークがどこか?」ですね。石井丈裕(早稲田実業・西武ライオンズ他)さんや上原浩治投手(東海大仰星・読売ジャイアンツ他)、黒田博樹投手(上宮・広島東洋カープ他)らは高校時代2番手の投手でした。なぜ彼らが2番手だったのか?その時点では当時のエースの方が力があったからです。つまり石井丈裕さんや上原浩治投手、黒田博樹投手はピークがもっと先にあったということです。このピーク云々は医学的にも実証されているので、プロ野球のスカウトも『選手のピークと伸び率』に大いに注目しているようです。

『独立プロ野球が求める才能』
<群馬ダイヤモンドペガサス 堀口芳明社長に聞く『群馬ダイヤモンドペガサスが求める才能』!>
群馬ダイヤモンドペガサスの所属する独立プロ野球のBCリーグは地域の人から応援していただいて初めて存在する価値が生まれるのです。まずもって『地域貢献』ありきです。そのことを概念として理解できる人でないと、いくら野球の技術や能力が高くても、独立プロ野球でやっていくのは難しいでしょうね。この部分は高校や大学での部活動はもちろん、社会人野球やNPBと大きく異なるところです。
群馬ダイヤモンドペガサスの使命は選手を育成してNPBやメジャーリーグに輩出することです。いわゆる育成球団です。然るに、我々が求める人材は『完成品』ではなく『伸び代の大きい未完成品』というわけです。選手を見る視点も「どれくらい伸び代があるのだろう」「うちに来ればここまで成長するかも知れない」となります。具体的には足腰や肩、走力といった基礎体力、そして天性の素質を厳しく観察します。反対に後付けが利くものについては大目に見ますね。多少荒削りでも大胆な長所を持った選手の方がチャンスが多いとも言えるでしょう。


『大学野球が求める才能』
<上武大学硬式野球部 谷口英規監督に聞く『上武大学が求める才能』!>
――上武大学硬式野球部はどんな人材を求めているのでしょうか。
谷口監督/上武大学硬式野球部が求めている人材は『①将来性』『②「上武大学で野球をしたい」という強い動機がある』『③指示待ちではなく主体性を持って考えて行動できる』『④「体育の先生になりたい」「看護の資格を取って看護師になりたい」といった将来の夢を持っている』の4つを持ち合わせた選手です。
――高校野球と大学野球の大きな違いを教えてください。
谷口監督/高校野球と大学野球の一番の違いはスピードと力強さです。大学生になると骨格も出来上がってくるのでトレーニングもしっかりやれます。身体つきも高校生とは大きく異なります。それがスピードと力強さにつながっています。
――投手をスカウトする場合「直球の球速○○㎞/h以上」などの基準はありますか。
谷口監督/球速表示はほとんど参考にしませんね。みなさんMAXの数字を言ってくるので「140㎞/hです!」と言っても、せいぜい135㎞/hぐらいでしょう。それに「速い」「速くない」は体感です。球速表示を見て、首をかしげる打者はいても、そこで初めて「速い!」と感じる打者はいませんよね。それよりも将来性を見ます。それぞれの大学の指導者に好みがありますが、私が見るのは『骨格』『腕の長さ』『腕の振り』です。
――野手はいかがでしょうか。
谷口監督/なかなか走攻守3拍子揃った選手はいませんので、例えば『足が速い』『肩がよい』『長打力がある』『スイングスピードが速い』など、どこか一つ際立った何かを持っていることが大切ですね。それがあれば大学野球で十分勝負できると思います。
――最後に『保護者の方に知ってほしいポイント』をお願いいたします。
谷口監督/『大学野球は大人の野球』ということを知っていただきたいですね。中学や高校では保護者会という組織があって、色々なお付き合いをされていたと思いますが、大学野球では一切ありません。大学での4年間は子どもから大人になる大事な期間ですので、ぜひ温かく見守ってほしいですね。その方が選手が成長すると思います。
(2015年5月27日取材)

『群馬の高校野球』を考える~2015年夏~ Part3
群馬の高校野球『怪物列伝』
~近代編:渡辺久信から髙橋光成~
<元ヤクルトスワローズ 忰田幸也さんに聞く『怪物列伝』>
 怪物と言えばやっぱり渡辺久信さんですね。あの当時、あんな速い球を投げる投手は存在しませんでした。あのスピードは少年心に「凄いな」と感じました。衝撃でしたね。スピードという点では、久信さんと、ロッテにドラフト1位で指名された笠原栄一さんが双璧でしょう。未だにこの二人を超える速い球を投げる投手は出現していません。この二人に準ずるのが内山憲一さんですね。内山さんとは高校時代に私が1年生で内山さんが3年生の時の敷島球場でのベスト8で対戦しています。当時は「東農大二が伊商に負けるはずがない」と公言していましたが、内心は「内山さんは(対戦相手として)まずいだろう」「速すぎるぞ」と思っていました(笑)。また、内山さんはとても投げ方が美しい投手という印象もありますね。渡辺久信さんから笠原栄一さん、内山憲一さんという群馬を代表する速球派が、一学年違いで3人揃ったというのは凄い奇跡ですね。
近年の投手で怪物と呼ぶのにふさわしいのは髙橋光成投手でしょう。一場靖弘さんも剛腕で怪物に近いイメージを持っていました。
 野手ではプロ野球には進みませんでしたが法政大からプリンスホテルで活躍した関東学園大附の山下修一さんです。彼こそ紛れもない怪物です。圧倒的な存在感がありました。身体も大きく、長打力もあり、守備も抜群でした。山下さん以外の打者で怪物となるとなかなか名前が挙がりませんね。好打者では五十嵐章人さんや駿太(後藤駿太)選手が印象的です。スケールの大きさでは狩野恵輔選手ですね。当時の阪神タイガースには稀代の名捕手・矢野燿大さんがいました。狩野恵輔選手にとっては捕手として使ってもらうチャンスが少なくアンラッキーでしたね。狩野恵輔選手の後輩(前橋工)の原澤健人選手もスケールの大きな選手として印象に残っています。

『群馬の高校野球』を考える~2015年夏~ Part4
中学野球の現状
『部活動の「軟式野球」とクラブチームの「硬式野球」』
<高崎市立並榎中学校 野球部顧問 栁澤共紀先生に聞く!>
――ずばりお聞きいたします。高校で硬式野球をやることを前提とした時に『中学生時代から硬式野球をやっていた方がよい』のか?それとも『個人差があるので体ができるまでは軟式野球の方がよい』のでしょうか?
栁澤先生/野球ファンの中には「中学生時代から硬式野球をやっていたほうが高校、大学、そしてプロを目指すのに有利である」と思っている方もいらっしゃると聞きます。ですが、結論から言えば『中学生時代に部活動の軟式野球をやっている』『ボーイズなどのクラブチームで硬式野球をやっている』というキャリアの差は関係ないですね。硬式野球と軟式野球それぞれに良さがあります。それは部活動とクラブチームも一緒です。(高校で硬式野球をやる選手が)中学で硬式野球と軟式野球に分かれていることの弊害は実はほとんど無いんです。あるとすれば、選手が「硬式の方が上」「軟式の方が下」という誤った意識を持ってしまう場合ですね。
――今年の春のセンバツ甲子園の後に『野球王国・四国凋落の理由』という記事が大手インターネットのニュースサイトに掲載されました。内容は「四国には中学生年代の硬式野球チームが少ない。それが近年の四国勢の甲子園での成績に関係している」というものでした。
栁澤先生/記事の詳しい内容は知りませんが、そのようなことも少しは関係しているのかも知れません。なぜなら『硬式と軟式』『部活動とクラブチーム』といった選択肢があることが大きなメリットになるからです。現実的には、高校生の1年生大会の段階では、中学生の時に硬式を経験していた方が幾分有利でしょうね。ですが、1年生も3~4ヶ月もたてば全く関係ありません。
――プロ野球からドラフト指名を受ける選手にも中学生の時に軟式野球をやっていた選手が数多く存在します。
栁澤先生/群馬県に限っても、直近で中学生の時に部活動で軟式野球をやっていた5名の選手がドラフト1位指名を受けています。
――昨年の髙橋光成投手(埼玉西武)ですね。
栁澤先生/他には、駿太(後藤駿太)選手(オリックス)、安達了一選手(オリックス)、斎藤佑樹投手(北海道日本ハム)、藤岡貴裕投手(千葉ロッテ)です。
――最後に、中学生野球の今後の課題をお聞かせください。
栁澤先生/今後の課題としては『硬式』『軟式』よりも、小学生年代からの競技人口の確保・拡大にあると思っています。今以上に野球を身近にして、小学生の子ども達やその保護者に「野球をやりたい!」と感じてもらいたいですね。また、今後は女子野球の普及にも力を注いでいきたいと思います。
(2015年5月25日取材)

『群馬の高校野球』を考える~2015年夏~ Part5
小学生年代に
『スモールベースボール』は
必要なのか!?

<元プロ野球選手 西澤洋介さんに聞く『小学生年代でのスモールベースボールへの提言』!>
小学生年代でも野球の試合において「勝つ」「負ける」はとても重要だと思っています。ですが、送りバントや進塁打など、勝つための細かな戦略は小学生年代ではいらないと思います。シンプルに『「来た球を思い切り打つ」それで「アウトになった」「ヒットが打てた」と楽しむ』それが本来の少年野球の姿ではないでしょうか。最近の高校野球を見ていてファーストストライクを思い切り振りに行ける選手が極めて少ないと感じます。私はその要因が、小学生年代の時に「1球待て」とか「右打ちしろ」「ゴロを打て」という技術的な要求が大きいことにあると推察しています。この感覚のまま中学高校と野球を続けていくと、打者として最も大切な「来た球に対して強くバットを振る」という行為ができなくなってしまいます。『小学生年代にスモールベースボールはいらない』と提言させていただいた理由はそこにあります。